技人国ビザ申請の事例紹介・ケーススタディ
各事例を紹介する前に
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、その名のとおり、技術類型・人文知識類型・国際業務類型の3つのカテゴリーをひとつにまとめたビザです。
このページでは、技人国ビザを技術/人文知識/国際業務の各カテゴリーに分けた上で、それぞれの概要や具体的な事例を紹介しています。なお、就労ビザに関する横断的な解説や申請の条件を知りたい方は、取扱業務ページから該当する記事をお選びください。
技術類型の業務とは
入国管理法上では、技術類型の業務は「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務」と定義されています。つまり、理系の分野に関連する業務のことを一般に技術類型といいます。
- システムエンジニア
- プログラマ
- CADを用いた設計開発など
大学等で理系科目を専攻し、一定水準以上の専門技術・知識を習得している外国人で、当該スキルを活かした仕事に従事する内定者が対象です。このケースでは、技人国ビザの中でも「技術類型」に該当するよう、申請書類の記載内容や提出資料を調整していく必要があります。
なお、理系の学問には情報学、基礎工学、機械工学、経営工学、化学、農学、物理学、統計学などが挙げられます。採用予定者の専攻科目は大学等から発行される卒業(見込)証明書から確認できます。
技術類型のケーススタディ
この章では、以下の例について検討してみます。
- 文系出身者のエンジニア採用
- 機械の組み立て作業
- 技術営業として採用
文系出身者のエンジニア採用
文系学部卒業者(卒業見込み含む)をエンジニアとして採用したい
ソフトウェアの開発に従事する場合は、情報処理の知識が求められるため、理系出身者を雇用するのが通常です。しかし、人文科学(文系学問)に関する知識を必要とするソフトウェア開発に従事する場合は、個々の事情にもよりますが、文系出身者であってもエンジニアとして技人国ビザが付与される可能性はあります。
大学または大学院で学んだ文系科目の知識・知見と、ソフトウェア開発に必要となる知識の関連性を、合理的に立証できるかどうかがポイントになります。
機械の組み立て作業
理系学部卒業者(卒業見込み含む)を機械の組み立て作業に従事させたい
当該ケースでは、技人国ビザは原則許可されません。在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、業務内容自体に一定水準以上の知識やスキルを要することが条件となっています。単に機械の組み立て作業のみを行う仕事は単純労働とみなされ、ビザの該当性がないと判断されます。
ただし、現場での組み立て作業はあくまでも社員研修の一環として短期間のみ実施されるものであり、ゆくゆくは機械の設計者や、現場の指揮監督者として活躍してもらうことを前提とした採用であれば、ビザは許可され得ます(参考:名古屋地裁平成28年2月18日判決)。
技術営業として採用
理系出身者(卒業見込み含む)を技術営業として採用したい
技術営業・セールスエンジニアの業務であっても、技人国ビザの取得は可能です。営業職は本来「人文知識類型」に該当しますが、大学または大学院で履修した理系科目に関連する知識が必要となる営業活動であれば「技術類型」に該当します。
人文知識類型の業務とは
入国管理法上、人文知識類型の業務は「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務」と定義されています。つまり、文系の分野に関連する業務を一般に人文知識類型といいます。
- 営業職
- 総合職
- 経理・会計
- コンサルタントなど
大学等で文系科目を専攻し、一定水準以上の専門的知識を習得している外国人で、当該知見を活かした仕事に従事する内定者が対象です。このケースでは、技人国ビザの中でも「人文知識類型」に該当するよう、申請書類の記載内容や提出資料を調整していく必要があります。
なお、文系の学問には経済学、商学、経営学、会計学、社会学、経済統計学、語学、文学、教育学、心理学、法学などが挙げられます。採用予定者の専攻科目は卒業(見込)証明書から確認できます。
人文知識類型のケーススタディ
この章では、スーパーマーケット(小売業)での雇用を例に考えてみます。
経済学部出身者(卒業見込み含む)を事業戦略担当者として雇用したい
販売分析や経営戦略の策定などに関わる業務は「人文知識類型」の代表例です。通常、小売業においては売り上げのデータ分析や各店舗に応じた企画・マーケティングなどが求められるため、審査項目でもある「一定水準以上の能力が必要になる業務」に該当すると推定されます。
また、スーパーマーケットでの戦略立案においては、販売の経験や来店客との会話・接客体験が効果的に機能すると考えられるため、入社当初の短期間であれば店舗等での社員研修(いわゆる単純労働)が認められる可能性は高いといえます。
国際業務類型の業務とは
- 通訳・翻訳
- 語学の指導
- 広報・宣伝
- 海外取引業務
- 商品開発
- デザイナー(服飾・室内装飾)
上記に代表される、外国の文化に基盤を有する思考・感受性に基づく、一定水準以上の専門的能力を必要とする文系の業務を、技人国ビザの中でも一般的に国際業務類型と呼びます。枠内に列挙した業務に従事する場合は「国際業務類型」に該当するよう、申請書類の記載内容や提出資料を調整していく必要があります。
なお、人文知識類型(文系総合職)と国際業務類型は複合的に絡み合うため、仮に人文知識類型にも該当するケースでは、当該類型に関する立証資料も併せて提出することが望ましいとされています。
国際業務類型の取得条件
技人国ビザ(国際業務類型)の取得においては、下記2点のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 学歴の要件
- 3年以上の実務経験
学歴の要件について
日本または海外の大学で、業務上必要とされる知識に関連する科目を専攻した外国人や、日本の専門学校に在籍し「専門士」の称号を取得予定の外国人においては、3年以上の実務経験が免除されます。つまり、履修した科目と業務の内容に関連性が認められれば、学歴要件を満たすことになります。
なお、具体的な専攻科目としては、広報、宣伝、マーケティング、経済学、観光ビジネス系科目が主に挙げられます。採用予定者の専攻科目は卒業(見込)証明書や成績証明書から確認できます。
通訳・翻訳・語学指導に従事する場合
通訳や翻訳、語学指導業務を行う予定の外国人に対しては、さらに要件が緩和され、大学さえ卒業していれば、専攻科目を問わず技人国ビザが許可され得ます。例を挙げると、日本の大学を卒業した外国人が、通訳・翻訳担当として勤務する場合、在籍していた学部に関係なくビザが付与されます。
もちろん、専攻科目との関連性が求められないとはいえ、通訳・翻訳を遂行できる程度の日本語能力を有していることは前提となります。
実務経験の要件について
前項の学歴要件を有していない場合は、3年以上の実務経験を立証した上で就労ビザ申請に臨みます。なお、実務要件は関連する業務の範囲内であれば経験年数にカウントされ、必ずしも日本で行う業務と一致した実務経験が求められているわけではありません。
- 当該外国人が経験した実務の内容
- 業務上の成果
- 日本で行う業務との関連性
実際の申請では、これらの点を踏まえた合理的な説明が必要です。また、審査官にわかりやすいかたちでアピールするため、業務内容によっては簡易なポートフォリオ(作品集)を提出するケースもあります。
アルバイトは実務経験にならない
実務経験年数を計算する際は、職業活動の一環として従事した期間のみカウントされる点に注意してください。学生時代に行っていたアルバイトでは実務経験があるとみなされません。学校での教育を終え、職業として勤務していた期間が実務経験として算入されます。
国際業務類型のケーススタディ
この章では、以下の例について検討してみます。
- 通訳・翻訳業務
- ホテルのフロント業務
通訳・翻訳業務
外国人を自社の通訳・翻訳担当者として雇用したい
まず、採用にあたって、本当に当該企業は通訳や翻訳が必要な業務を行っているのかという点が審査されます。具体的には、企業の登記事項証明書(履歴事項全部証明書など)の事業目的欄が参照されます。
登記事項証明書から判断できない場合は、別途パンフレットや申請理由書などにおいて、通訳・翻訳業務の必要性を立証していくことになります。
外国人の日本語能力
申請人(採用された外国人)の日本語能力については、日本語能力試験N1またはN2レベルであることが望ましいとされます。N3、N4レベルでは通訳・翻訳業務において不十分だと判断される可能性があります。なお、各レベルの目安は日本語能力試験公式Webサイトを参考にしてください。
- N1幅広い場面で使われる日本語を理解できる
- N2日常的な場面で使われる日本語を理解できる
- N3日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる
- N4基本的な日本語が理解できる
加えて、大学とは別に、国内外の日本語学校に在籍していた過去があれば、当該日本語学校の卒業証明書や成績証明書なども併せて提出します。
ホテルのフロント業務
外国人をホテルのフロントスタッフとして雇用したい
技人国ビザ申請の中でも、ホテルでのフロント業務は慎重に対処するべき案件です。実務上は、飲食店等の接客業務と同様に単純労働とみなされる傾向にあり、また当該ホテルの外国人利用者の割合なども厳しく審査されます。ベッドメイキングや清掃業務は、単純労働に該当するため当然に禁止されています。
そのため、大卒者(卒業見込みを含む)や、日本国内の専門学校で観光学などを学び「専門士」等の称号を取得している外国人であっても、履修した科目と従事する業務との関連性を鮮明にしなければなりません。
申請時のポイント
- フロント業務(通訳・翻訳者)の重要性
- 海外客に対する新規市場開拓
- 営業戦略の立案業務
上記のような内容に触れながら、具体的かつ論理的な主張・立証を重ねていくことが、技人国ビザの許可率を高めるためのポイントといえます。
また、規模の大きいホテルや、外資系のホテルであれば、一定数の外国人客及び外国語を用いた業務が想定されるため、許可も下りやすい傾向にありますが、知名度や実績に関して「まだこれから」といったホテルで雇用される場合は、より慎重な書類作成が求められます。
技人国以外のビザも候補になる
通訳・翻訳業務が比較的少なく、日本人客の対応がメインになるケースや、清掃等が主な業務内容になるケースでは、技人国ビザではなく、特定活動ビザ(告示46号)や特定技能ビザを検討します。特定活動ビザも特定技能ビザもかんたんには取得できませんが、消去法的にこれらのビザを選択する場合もあります。
おわりに
入管局は申請者の味方ではありませんが、私たちにとっては大切なクライアントです。もし、弊所にご相談をご検討であれば、ありのままの事実をお聞かせください。たとえ、それが審査で不利になるような事柄であっても、申請前であればある程度の対応は可能です。
まずはいろんな事務所と比べてみてください。私たちは、貴社の良き理解者・パートナーとして尽力することをお約束します。
取扱業務の一覧に戻るPERSON IN CHARGE
Please Contact Us!
スマホやパソコンから
サクッと相談できます。