離婚した場合のビザ(定住者ビザ)の概要とアウトライン

西川 諒

執筆者

西川 諒

駒田 有司

執筆者

駒田 有司

離婚定住者ビザ申請の概略(在留資格変更許可申請)

離婚定住者ビザとは

在留資格「定住者」は、特別な理由を考慮して居住を認めるべき外国人のために設けられたビザです。その中でも、日本人や永住者と離婚したあとも、引き続き在留を希望する外国人に関係するものを、一般的に離婚ビザ(離婚定住)と呼びます。

離婚した外国人の配偶者ビザはどうなりますか?

弊所でもこのようなご相談をたびたびお受けしますが、まず現在保有している配偶者ビザについては、離婚によって該当性が失われるため、配偶者ビザのままでは日本に滞在できません。そのため、多くのケースでは以下のどちらかの方法を検討することになります。

  • 就労ビザへの変更
  • 定住者ビザへの変更

就労ビザは要件が厳しい

就労ビザとはその名のとおり、日本で仕事をするためのビザを意味し、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などが主に該当します。離婚後も継続して就労することを条件に「日本人の配偶者等」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更申請を行うのが前者の方法です。

しかし、就労ビザは離婚した配偶者なら誰でも申請できるものではなく、学歴や業務内容、給与体系など、以下に示した各種要件をすべて満たしていなければ許可されません。

  • 大卒以上、もしくは日本の専門学校を卒業し専門士等の称号を取得した者
  • いわゆるホワイトカラーの職種に就くこと
  • 日本人従業員と同等かそれ以上の給与額で契約を締結すること

離婚定住を選択するケースが多い

上記の理由から、離婚した配偶者は就労ビザの要件に該当しないことが多く、そういった外国人たちの実質的救済措置として離婚定住ビザ(定住者ビザ)が機能します。まとめると「日本人の配偶者等」から「定住者」へ在留資格を変更することで、引き続き日本での生活が可能になります。

なお、離婚定住ビザの取り扱い上、一度本国へ帰国された方に関しては、再度定住者ビザを取得しての来日が認められない点にご留意ください(告示外定住)。離婚定住ビザは、原則「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」ビザからの変更申請のみ受理されます。

離婚定住者ビザ取得の条件

実務上、配偶者ビザから離婚定住ビザへの変更申請には5つの要件があります。離婚定住ビザは、入管局での厳格な審査を経て許可・不許可が決定されるため、下記5つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 婚姻期間が3年以上継続していた
  • 安定した収入の見込みがある
  • 基本的な日本語能力がある
  • 在留を希望する合理的理由がある
  • 公的義務を履行している

婚姻期間が3年以上継続していた

離婚に至るまでの間、一般的な夫婦生活をおおむね3年以上送っていたことが最初の条件です。審査項目となる「客観的にみて正常な婚姻関係・家庭生活」を立証するには、原則同居していた事実が求められます。仮に別居期間があっても、夫婦間の相互扶助が認められれば、3年に算入され得ます。

なお、夫婦の間にお子様がいて、かつ離婚した外国人配偶者が日本人の子どもを親権者として養育していく場合は、仮に婚姻期間が3年未満であっても定住者ビザへの変更は許可されやすくなります。

上記の申請を一般に「日本人の実子扶養定住」といいます。

安定した収入の見込みがある

離婚した配偶者には、今後も日本で安定して暮らしていける程度の収入・資力が求められます。実務上は、20万円前後の月収がひとつの目安になると解されます。

勤務形態に関して特段の制限はありませんが、正社員として在職するに越したことはありません。また当該外国人が婚姻中から企業に在籍している場合は、離婚後も引き続き同社での勤務が可能です。

専業主婦・主夫の場合

離婚時点で専業主婦・主夫の方は、速やかに就職活動を行い、雇用契約を交わすべきです。実際の変更申請では、雇用契約書等の資料を添付し、就労意思や将来的な自活能力について主張及び立証していきます。

ちなみに、就労ビザと異なり、定住者ビザには就労制限がないため、業種は自由に選べます。いわゆる単純労働に該当する仕事でも問題ありません。

基本的な日本語能力がある

  • 日常生活に不自由しない
  • 通常の社会的生活を営める

上記の2点がポイントとなります。基本的な意思疎通が図れるのであればそこまで気にする必要はありません。なお、必須資料ではありませんが、各種日本語能力試験(JLPTなど)に合格している場合は、合格証・証明書のコピーも併せて提出します。

在留を希望する合理的理由がある

本来、配偶者ビザは「日本人の妻または夫」という身分関係に対して付与されるビザなので、離婚してしまった場合は身分の消滅に伴い、帰国を余儀なくされます。

ほとんどのケースでは、住み慣れた日本で引き続き暮らしていきたい、だから母国へ帰国したくない、というのが一番の理由になると思われますが、その理由のみを書面で記述するのは避けるべきでしょう。

  • 離婚に至った経緯
  • これまでの在留歴
  • 現在の生活状況
  • 勤務先との契約内容・月収額
  • 身元保証人との関係

こういった要素をきちんと掘り下げて、より具体的・論理的に書面を組み立て、申請人(在留を希望する外国人)の日本における定着性を、申請理由書内でアピールすることが大切です。また、家庭内暴力(DV)や子どもの養育上の問題などがあれば、その詳細についても立証していきます。

身元保証人については後ほど説明します。

公的義務を履行している

公的義務とは、法律違反の有無や納税状況を指します。税金の滞納や交通違反などが過去にあれば、在留状況が不良だと評価され、離婚定住ビザの申請においても不利になります。

また現行の法律上、離婚した場合は14日以内に出入国在留管理局への届け出が必要です(入管法第19条の16)。2週間を経過してしまうと届出義務違反に該当します。忘れている方は、今からでも構わないので、速やかに届け出を済ませておきましょう。

6ヵ月を過ぎると取消対象になる

さらに離婚してから6ヵ月を経過すると、正当な理由がある場合を除いて、配偶者ビザが取り消しの対象となってしまいます(入管法第22条の4)。半年が過ぎた時点で即出国になるわけではありませんが、非常に不安定な状況に置かれてしまうため、一刻も早いビザの切り換えが求められます。

離婚定住ビザと身元保証人

離婚定住ビザの申請には、原則身元保証人が必要になります。配偶者ビザ申請時の身元保証人は通常、日本人配偶者が担うため検討の余地はありませんでしたが、離婚した外国人は自分で保証人を探さなければなりません。

なお、この章に関しては日本側の身元保証人もお読みいただけるよう構成しています。打診を受けた保証人の方も是非一読ください。

身元保証人に求められるもの

まず、離婚した外国人は身元保証人を検討するにあたり、主に下記の3つから選ぶことになります。また身元保証人は、原則として定職に就いており、一定以上の収入を得ていることが条件です。

  • 友人・知人
  • 職場の同僚
  • 職場の雇用主

これらとは別に、日本で暮らしている当該外国人の家族・親族がいれば、その方に保証人をお願いする選択肢もあります。そして、離婚された外国人と依頼を受けた身元保証人様から、身元保証の範囲・責任についてのご相談をよくいただきます。

身元保証人の法的責任

保証人にはどこまでの責任がある?トラブルが起きれば保証人にも法的責任が及ぶ?

結論から先に述べると、身元保証人に法的責任は及びません。仮に金銭的な問題が生じたとしても、取り立てや督促などを受けることもなく、保証人にはあくまで常識の範囲内での監督(道義的責任)が求められます。補足すると、法令によって強制されないが、守るべき道徳や倫理のことを道義的責任といいます。

つまり、離婚した外国人が引き続き日本在留中に法律違反を犯したとしても、身元保証人が何らかの罰則を受けることはありません。その上、保証人には身元保証書と呼ばれる書類への署名が求められますが、保証の項目は下記の3点に限定されています。

  • 滞在費の支弁
  • 帰国旅費の支弁
  • 法令の遵守

身元保証人側のデメリット

唯一のデメリットとして、万が一、上記で説明した事項に関する道義的責任を果たせなかった場合、当該身元保証人は適格性を欠くと判断されます。言い換えると、仮に本人が他の外国人の身元保証人になると申し出ても、入管側から「前回の件があるのであなたは相応しくない」と評価されてしまいます。

過去に道義的責任を果たせなかった日本人の方は、今回の申請で再度保証人になることを控えるべきです。もちろん、犯罪に加担する目的で身元保証を引き受けた場合は別途刑事責任を問われます。

身元保証人からのご相談について

実際の離婚定住ビザ申請は、申請人(離婚した外国人)と身元保証人が一緒に手続きを進めるケースも多々あります。そのため、弊所では身元保証人様からのご依頼・ご相談に関しても柔軟に受け付けております。

離婚定住ビザ申請の必要書類

離婚定住ビザの申請には原則として面接がなく、提出した書類のみで審査が進んでいきます。また、書類の組み合わせも個々の案件によって様々で、当事者の状況に応じた修正・リファレンスが求められます。

海外側で準備する書類 住民票 納税証明書
証明写真(4cm×3cm) 身元保証書 在職証明書/雇用証明書
在留カードの写し 履歴事項全部証明書 確定申告書の写し
パスポートの写し 雇用契約書 預金残高証明書
日本側で準備する書類 採用内定通知書 預金通帳の写し
前配偶者の戸籍謄本 労働条件通知書 各種補足説明書
離婚届の受理証明書 課税所得証明書 嘆願書
在留資格変更許可申請書 給与明細書の写し 反省文
申請理由書 給与支払証明書 源泉徴収票

上記で紹介している資料は一例ですが、通常はこれらの中から書類間の整合性を考慮し、依頼者様に一番相応しい組み合わせを検討・選択していきます。

またご覧の通り、提出書類のほとんどが日本側で用意するもので占められているため、私たちの作成する「申請理由書」や、別途「補足説明書」などが審査の結果に直接影響します。申請書類の枚数は個々の事例にもよりますが、約20~40枚が平均となります。

当事務所のサポート内容

最後に、弊所のサービス内容についてご説明します。

申請に必要な資料をすべてご案内

離婚に至った経緯や現在の生活状況、身元保証人の資力、最新の許可データなどをもとにオーダーメイドで必要資料をご提案します。依頼者様に行っていただくことは、下記3点のみでかんたんに手続きができます。

  • 弊所作成のリストをもとに役所・金融機関等で資料の取得
  • Webヒアリングシートの入力
  • 完成書類を管轄の出入国在留管理局へ提出

また私たちは来所不要で業務が完了する仕組みを整えておりますので、仕事終わりや休日に弊所まで足を運ぶ必要もございません。事務所の開設以来全国対応を実現させており、あらゆる地域の方からのご依頼をお受けしています。

受け取った書類の精査・チェック

当事務所が作成する書類以外にも、依頼者様側で準備された資料が審査ではポイントとなります。そのため、私たちは受け取った書類をそのままにせず、精査を通して個々の事例に即した確認作業を行います。

**の書類が**なので、事前に**の書類も追加で用意してください

依頼者様でも気付かないような箇所や、書類間で生じる小さな矛盾にも対応でき、入管局から追加資料提出通知を受ける頻度も激減します。

申請書類をすべて作成

申請に必要な書類をまとめて作成します。事務所内で完結するため、整合性のとれた高品質な書類が納品されます。なお、作成期間は執務状況にもよりますが約10日間をいただいております(準備いただいた資料に問題等なく、作成が可能となった日から10日間)。

申請理由書(別紙)

申請理由書(別紙)

補足説明書(各種)

補足説明書(各種)

その他書類(適宜)

その他書類(適宜)

私たちは基本的な申請書類に加えて、これら弊所独自の書式も豊富に取り揃えており、依頼者様ひとりひとりに適した資料を作成・添付いたします。追加費用は一切いただいておりません。

追加資料提出通知の対応

仮に追加資料の提出通知(資料提出通知書)を受け取った場合、速やかに担当者へご連絡ください。類似案件の所内調査ののち、私たちが追加書類一式の作成や審査官との交渉を行います。依頼者様は書類を入管局へ郵送するだけで手続きが完了します。

追加オプションをご利用いただければ、提出を含めたすべての手続きを私たちが代行いたします。
資料提出通知書

資料提出通知書

追加の補足説明書

追加の補足説明書

追加の状況説明書

追加の状況説明書

追加書類の提出期限は、2週間程度の期間を設定されるケースが多く、迅速な対応が求められます。通知の内容によっては依頼者様への再度ヒアリングや、別途補足資料の準備をご案内しますのでご安心ください。

面接時のアドバイス

万が一の面接もご安心ください。出入国在留管理局から面接の連絡があったとご報告をいただければ、担当者より改めて依頼者様へ想定される質問事項や対応策をお伝えします。

不許可となってしまった場合は、全額ご返金または無料再申請でご対応いたします(一部例外あり)。

よくあるご質問

永住者または特別永住者とご離婚された外国人でも離婚定住ビザは申請できます。この場合は、ご離婚された妻・夫が「永住者の配偶者等」ビザを保有していることが条件になります。

原則、ビザの変更を希望する外国人が申請書類を持って、お近くの出入国在留管理局もしくは出張所へ出向き申請することになります。また、身元保証人様もご同行されることが望ましいです。なお、追加オプションをご利用いただければ、私たちが申請手続きも代行いたします。

標準処理期間として2週間から1ヵ月間と公表されています。なお、それよりも短い期間で結果を通知されるケースもあれば、1ヵ月を超えて審査が継続するケースもございます。

許可になるとハガキの通知書が郵送されます。その後、同ハガキに記載されている資料(パスポートや申請受付票、収入印紙など)を持参し、指定された期日までに出入国在留管理局へ出向き、在留カードを受け取ります。在留カードの受領によって、正式にビザが付与されることになります。なお、許可後の手続きに関しても、追加費用なしで弊所に質問等できるのでご安心ください。

書面審査以外に、審査官が前配偶者に対して、離婚事由や当時の状況などについて聴取を行うケースもまれにございます。もし、申請中にトラブルや不測の事態が発生した際は、弊所までご連絡ください。

参考法令・裁判例など

民法第820条,児童の権利に関する条約第9条,出入国管理及び難民認定法第7条1項2号,東京地裁平成27.1.28判決,東京地裁平成14.4.26判決,法務省入国管理局長通達(平成8.7.30)

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Ryo Nishikawa
大阪府行政書士会

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駒田 有司

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駒田 有司
Yuji Komada
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