就労ビザから永住権(永住ビザ)を取得する際のポイント

西川 諒

執筆者

西川 諒

駒田 有司

執筆者

駒田 有司

永住申請の概略(就労ビザから永住権・永住ビザを取得する)

永住権・永住ビザとは

在留資格「永住者」は、一定の要件を満たした外国人が、法務大臣に対して「永住許可申請」を行い取得するビザのことをいいます。永住者ビザも永住ビザも永住権も、言い方が異なるだけで意味は同じです。永住ビザはその性質上、在留資格変更申請の一種であると解されます。

  • ビザの延長・更新手続きが不要
  • 職業の選択や転職が自由

このように、永住ビザは他のビザと比べて大幅に在留管理が緩和されており、より安定した暮らしを日本で送れます。ただ自由度の高いビザであるがゆえ、厳格な審査、ひいては不許可になる割合が高く、法律上も独立した規定が永住申請には設けられています(入管法第22条)。

なお、永住ビザへの変更を希望する申請人(外国人)については、現在保有している就労ビザの期限が経過する前に永住申請を行わなければなりません。審査中に在留期限を迎えることとなった場合は、その間のつなぎとして、改めて就労ビザの延長・更新申請を済ませる必要があります。

永住者ビザのメリット

はじめに、永住権/永住ビザを取得するメリットを2つ紹介します。

在留期間が無期限になる

永住権とは名前のとおり、本来の国籍を維持したまま、期間の定めなく日本に滞在できる身分・権利を意味します。現時点で所持している就労ビザには在留期間が定められており、通常はその期限が経過する前にビザの延長・更新申請を行わなければなりません。

しかし、更新申請は必ず許可になるわけではなく、具体的な職務内容や転職の有無、給与額などの在留状況を加味した上で、その都度審査がなされます。

就労ビザの潜在リスク

つまり、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)で在留している外国人には、入管側の判断次第で突然、本国へ帰国させられてしまう可能性が潜んでいます。入管局から「審査の結果、更新申請は不許可になった」と通知を受ければ原則、もう就労ビザでの滞在はできなくなります。

一方で、ひとたび永住ビザを取得してしまえば、在留期限が無期限になるため、上記のような不安定さは払拭されます。更新申請のたびに心理的なストレスを抱えることなく、安心できる生活が保障されます。

なお、更新申請不許可時の最終的手段としては出国準備期間中の再申請等が挙げられます。

日本国内で自由に活動できる

名前のとおり、就労ビザは日本国内で就労活動をする外国人のために交付されるビザなので、どんな事情があれ、仕事を辞めてしまえば原則帰国しなければなりません。

加えて、就労ビザの多くは、申請人(当該外国人)が前職での経験や大学等での専攻科目を活かせる業務に従事している必要があるため、自身の経歴等と関係のない業務で給料を得ている場合は原則、就労ビザの延長・更新の対象にはなりません。

日本人/永住者と婚姻中の方は、就労ビザから配偶者ビザへ変更することで引き続き在留できます。

退職が在留状況に影響しない

就労ビザで今後も日本で生活していくためには、現在の仕事を長期間続けていくことが求められます。しかし、永住ビザを取得している外国人であれば、在留期限の他に活動内容の制限もなくなるため、下記のような自由なライフスタイルを選択できます。

  • 好きなタイミングで好きな職に就く
  • 勉強するためもう一度大学に入学する
  • 独立して会社を立ち上げる

また、永住権があれば社会的な信用も得られるため、住宅ローンの審査においても優遇されます。

永住者ビザ申請の条件

裁判所が示した過去の判決上、永住申請における許可・不許可の判断は法務大臣の裁量が認められると解されています。言い換えると、当該外国人に関連する事柄はもちろんのこと、日本の外国人受入能力や出入国管理を取り巻く国際情勢なども総合的に考慮して審査を行うとの立場をとっています。

あらゆる事情を勘案して許可・不許可を決定します

しかし、いくら法務大臣に決定権があるとはいえ、その範囲は比較的狭いものとされています。そのため、各種要件(素行善良要件・独立生計要件・国益適合要件)の審査にあたっては、法務省が公表しているガイドラインを基準にするのが一般的です。

この章では、上記ガイドラインを踏まえて、永住申請時に求められる4つの条件を紹介します。

  • 在留期間を3年または5年で保有している
  • 来日して10年が経過している
  • 就労ビザで5年以上在留している
  • 公的義務を履行している
これらの条件は原則すべて満たしている必要があります。

在留期間を3年または5年で保有している

最初の条件として、現在保有している就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の在留期間が「3年」または「5年」であることが求められます。在留期間は在留カードの赤枠箇所から確認できます。ここに3年または5年と印字されていれば問題ありません。

在留カードの見本

来日して10年が経過している

厳密には、継続して10年以上日本に在留していることが必要です。再入国許可(Re-entry Permit)を受けずに日本を出国した場合や、一度ビザの期限が切れて新たに就労ビザを取得した場合は原則、在留が継続しているとはみなされません。仕事の都合で海外に出張していた期間は、審査上考慮され得ます(後述)。

就労ビザで5年以上在留している

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)を保有しながら、継続して5年以上日本に在留していることが求められます。なお、前項の「来日して10年が経過している」とは少し意味合いが異なります。

日本で10年生活していれば「5年以上の在留」の要件も満たされるのでは?

上記のように考える方もいるかと思いますが、この項目は主に「留学ビザ」で来日した外国人にとって注意するべき条件といえます。

  • 留学生として「6年」日本で過ごした
  • 就労ビザで働き始めて「4年」が経過した

このような状況において、当該外国人は永住ビザを申請できません。6年と4年の合計10年間日本で暮らしていますが、就労ビザの要件(5年以上)を満たさないため、あと1年待つ必要があります。

無職の期間があるケース

仕事を始めてから、転職活動や諸事情により約1年以上仕事をしていない期間がある場合、それまでの在留歴がリセットされる可能性もあります。1年以上無職の期間があれば、再び勤務を開始してからさらに5年程度待つよう入管局から案内されるケースもあります。

日本に特別に貢献したと認定される外国人(ノーベル賞受賞者など)は上記年数について優遇されます。

公的義務を履行している

公的義務とは、法律違反の有無や納税状況を指します。税金の滞納や交通違反などが過去にあれば、在留状況が不良だと評価され、永住ビザ申請は不利になります。健康保険料年金の未納についても、同様に厳しく審査されます。

実務上、きちんと法律を守り、社会的に非難されることのない生活を送っている外国人でなければ、永住申請は許可されません。そのため、年金等を滞納している外国人は、速やかに年金事務所等の窓口で所定の手続き(後納)を行うべきです。

法律違反についての補足

法律違反に関しては、仮に当該外国人が罰金刑に処せられた場合、少なくとも5年間は永住申請を控えるのが望ましいと解されます。なお審査官は、永住申請においてほぼ必ず前科照会を実施するので、くれぐれも過去の犯罪・前科について虚偽の申告をされないよう気を付けてください。

永住者ビザ申請の注意点

就労ビザを所持し、かつこれまでに掲げた諸条件をクリアしている外国人であれば、誰でも無条件に永住権が与えられるわけではありません。あくまでも、申請できる権利が付与されたに過ぎません。

繰り返しますが、永住ビザは他のビザ申請よりも慎重かつ厳格な審査がなされます。そこで、この章では、すべての申請者に共通する2つの注意点について説明します。

申請人の収入について

永住ビザを希望する外国人は、現在及び将来において自立した生活を続けなければなりません。職業や預貯金額も審査の対象になりますが、一般的に年収が300万円以上あれば許可率は高くなるとされています。なお、年収額の目安は扶養家族の人数や勤務形態、勤続年数等によって大きく左右されます。

諸事情によりわずかな空白期間がある方や、転職経験のある方であっても、現在継続して仕事を続けているのであれば、別途給与明細書や補足説明書の添付でリカバリーできる余地もあります。可能であれば、転職後から1年程度待たれたほうが審査上有利になるといえるでしょう。

現在までの在留歴について

永住ビザの申請では、これまでの出入国歴・在留歴についてもすべてチェックされます。たとえ就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の更新申請では見過ごされていた箇所であっても、永住権の取得にあたっては合理的なフォローが必要になるとお考えください。

  • 留学生のときに週28時間以上アルバイトをしていた
  • 海外出張等で日本を離れていた
  • 小さな法律違反が複数回ある(交通違反など)

これらの事実があれば審査上かなり不利になるため、申請のタイミングも含めて慎重に検討し、別途嘆願書(事情によっては反省文など)の作成も視野に入れたスケジュールを組むことになります。

不可抗力でも不利になり得る

会社からの辞令で日本から出国していた、出産・育児のため一時的に海外の実家で暮らしていた、などの不可抗力的な内容でもマイナスに評価され得ます。目安として、3ヵ月から6ヵ月間日本を離れていたケースでは、帰国してから再度1年が経過するまで申請を控えたほうが審査上有利になる場合があります。

「1年が経過しないと申請できない」という意味ではありません。

就労ビザへの影響

また入管局の調査の結果、在留の実態に疑義があると判断された場合は、永住申請が不許可になるだけでなく、現在保有している就労ビザにも悪影響を及ぼす可能性があります。手続きを開始する前に、パスポートなどを参照し、改めて渡航歴・在留歴について確認しておくよう推奨します。

永住者ビザ申請の必要書類

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)からの永住申請には原則として面接がなく、提出した書類のみで審査が進んでいきます。また、提出する書類の組み合わせも個々の案件によって様々です。実際の申請では、当事者の状況に応じた修正・リファレンスが求められます。

身元保証人が準備する書類 永住許可申請書 各種補足説明書
身元保証書 申請理由書 嘆願書・反省文
住民票 住民票 所属会社からの推薦状
在職証明書 在職証明書 表彰状/感謝状の写し
確定申告書の写し 確定申告書の写し ねんきん定期便
履歴事項全部証明書 課税所得証明書 国民年金保険料領収証書の写し
課税所得証明書 各種納税証明書 健康保険被保険者証の写し
各種納税証明書 預金残高証明書 国民健康保険料納付証明書
申請人側で準備する書類 預金通帳の写し 国民健康保険料領収証書の写し
証明写真(4cm×3cm) 履歴書 不動産の登記事項証明書
在留カードの写し 給与明細書の写し 健保・厚年保険料領収証書の写し
パスポートの写し 給与支払証明書 社会保険料納入証明書

上記で紹介している資料は一例ですが、通常はこれらの中から書類間の整合性を考慮し、依頼者様に一番相応しい組み合わせを検討・選択していきます。

ご覧の通り、提出書類のほとんどが日本側で用意するもので占められているため、私たちの作成する「申請理由書」や、別途「補足説明書」などが審査の結果に直接影響します。

配偶者やお子様がいる場合

申請人(永住申請を行う外国人)に配偶者やお子様がいる場合、下記の条件を満たしていれば、家族全員で永住ビザを申請できます。

  • 結婚して3年以上が経過している
  • 日本で暮らし始めて1年以上が経過している
  • お子様がいる場合、引き続き1年以上同居している

申請人の配偶者やお子様のビザは「家族滞在」であることがほとんどなので、在留資格「家族滞在」から直接、永住申請を実施することになります。その際、それぞれの親族関係を証明する資料(婚姻証明書:Marriage Certificateや出生証明書:Birth Certificateなど)を併せて提出します。

また、申請人の配偶者がアルバイト等で企業に所属しているケースでは、申請人だけでなく当該配偶者の職業及び収入証明資料を提出するのが望ましいとされています。

永住者ビザと身元保証人

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)を所持する外国人が永住申請を行うには、別途身元保証人が必要になります。保証人は原則日本人または永住者であることが求められるため、職場の友人や同僚、雇用主が身元保証人となり申請に至る案件が大多数です。

なお、この章に関しては日本側の身元保証人もお読みいただけるよう構成しています。打診を受けた保証人の方も是非一読ください。

身元保証人の法的責任

依頼を受けた身元保証人様から、身元保証の範囲・責任についてのご相談をよくいただきます。

保証人にはどこまでの責任がある?トラブルが起きれば保証人にも法的責任が及ぶ?

結論から先に述べると、身元保証人に法的責任は及びません。仮に金銭的な問題が生じたとしても、取り立てや督促を受けることもなく、保証人にはあくまで常識的範囲内での責任(道義的責任)が求められます。法令によって強制されないが、守るべき道徳や倫理のことを道義的責任といいます。

つまり、永住権を取得した外国人が法律違反を犯したとしても、身元保証人は道義的責任しか負わず、何らかの罰則を受けることはありません。その上、保証人には身元保証書と呼ばれる書類への署名が求められますが、保証の項目は下記の3点に限定されています。

  • 滞在費の支弁
  • 帰国旅費の支弁
  • 法令の遵守

身元保証人側のデメリット

唯一のデメリットとして、万が一、上記で説明した事項に関する責任を果たせなかった場合、当該身元保証人は適格性を欠くと判断されます。言い換えると、仮に本人が他の外国人の身元保証人になると申し出ても、入管側から「前回の件があるのであなたは相応しくない」と評価されてしまいます。

過去に道義的責任を果たせなかった日本人・永住者の方は、今回の申請で再度保証人になることを控えるべきです。もちろん、犯罪に加担する目的で身元保証を引き受けた場合は別途刑事責任を問われます。

身元保証人からのご相談について

実際の永住ビザ申請では、申請人と身元保証人が一緒に手続きを進めるケースも多々あります。そのため、弊所では身元保証人様からのご依頼・ご相談に関しても柔軟に受け付けております。

当事務所のサポート内容

最後に、弊所のサービス内容についてご説明します。

申請に必要な資料をすべてご案内

永住申請に至った経緯やこれまでの在留状況、現在の収入・資力要件、最新の許可データなどをもとにオーダーメイドで必要資料をご提案します。依頼者様側に行っていただくことは、下記の3点のみでかんたんに手続きができます。

  • 弊所作成のリストをもとに役所・金融機関等で資料の取得
  • Webヒアリングシートの入力
  • 完成書類を管轄の出入国在留管理局へ提出

また私たちは来所不要で業務が完了する仕組みを整えておりますので、仕事終わりや休日に弊所まで足を運ぶ必要もございません。事務所の開設以来全国対応を実現させており、あらゆる地域の方からのご依頼をお受けしています。

受け取った書類の精査・チェック

当事務所が作成する書類以外にも、依頼者様側で準備された資料が審査ではポイントとなります。そのため、私たちは受け取った書類をそのままにせず、精査を通して個々の事例に即した確認作業を行います。

**の書類が**なので、事前に**の書類も追加で用意してください

依頼者様でも気付かないような箇所や、書類間で生じる小さな矛盾にも対応でき、入管局から追加資料提出通知を受ける頻度も激減します。

申請書類をすべて作成

申請に必要な書類をまとめて作成します。事務所内で完結するため、整合性のとれた高品質な書類が納品されます。なお、作成期間は執務状況にもよりますが約10日間をいただいております(準備いただいた資料に問題等なく、作成が可能となった日から10日間)。

申請理由書(別紙)

申請理由書(別紙)

補足説明書(各種)

補足説明書(各種)

その他書類(適宜)

その他書類(適宜)

私たちは基本的な申請書類に加えて、これら弊所独自の書式も豊富に取り揃えており、依頼者様ひとりひとりに適した資料を作成・添付いたします。追加費用は一切いただいておりません。

追加資料提出通知の対応

仮に追加資料の提出通知(資料提出通知書)を受け取った場合、速やかに担当者へご連絡ください。類似案件の所内調査ののち、私たちが追加書類一式の作成や審査官との交渉を行います。依頼者様は書類を入管局へ郵送するだけで手続きが完了します。

追加オプションをご利用いただければ、提出を含めたすべての手続きを私たちが代行いたします。
資料提出通知書

資料提出通知書

追加の補足説明書

追加の補足説明書

追加の状況説明書

追加の状況説明書

追加書類の提出期限は、2週間程度の期間を設定されるケースが多く、迅速な対応が求められます。通知の内容によっては依頼者様への再度ヒアリングや、別途補足資料の準備をご案内しますのでご安心ください。

面接時のアドバイス

万が一の面接もご安心ください。出入国在留管理局から面接の連絡があったとご報告をいただければ、担当者より改めて依頼者様へ想定される質問事項や対応策をお伝えします。

不許可となってしまった場合は、全額ご返金または無料再申請でご対応いたします(一部例外あり)。

よくあるご質問

原則、永住者ビザを希望する外国人が申請書類を持って、お近くの出入国在留管理局もしくは出張所へ出向き申請することになります。もちろん、身元保証人様がご同行されても構いません。なお、追加オプションをご利用いただければ、私たちが申請手続きも代行いたします。

標準処理期間は約4ヵ月と公表されています。なお、近年は審査期間の長期化が目立っているため、特段問題のない内容でも、半年~1年程度で結果を通知されるとお考えください。

許可になるとハガキの通知書が郵送されます。その後、同ハガキに記載されている資料(パスポートや申請受付票、収入印紙など)を持参し、指定された期日までに出入国在留管理局へ出向き、在留カードを受け取ります。在留カードの受領によって、正式に永住権が付与されることになります。なお、許可後の手続きに関しても、追加費用なしで弊所に質問等できるのでご安心ください。

書面での審査以外に、電話・訪問等の手段で聴取が実施されるケースもまれにございます。もし、申請中にトラブルや不測の事態が発生した際は、弊所までご連絡ください。

在留カードの更新が7年に一度ございます。法律違反等の問題がなければ、特段審査もなく、原則即日で新たな在留カードが交付されます。

不許可の理由によっては、弊所ですぐに再申請に取り掛かれます。なお、居住要件等の理由で不許可になっている場合は、相応の期間が経過するまで再申請を控えることが望ましいです。詳細な内容については無料相談をご利用ください。

参考法令・裁判例など

刑法第34条の2,道路交通法第118条,出入国管理及び難民認定法第19条の5,出入国管理及び難民認定法施行規則第19条,東京高裁平成19.7.17判決,永住許可に関するガイドライン

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