就労ビザ申請の概要と注意点(海外からの呼び寄せ)

西川 諒

執筆者

西川 諒

駒田 有司

執筆者

駒田 有司

就労ビザ申請の概略(海外からの呼び寄せ)

就労ビザ・技人国ビザとは

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、企業等のニーズに基づき、専門的・技術的分野に従事する外国人を雇用するために創設されたビザです。一般的に、就労ビザや技人国ぎじんこくビザ、ワークビザとも呼ばれます。

外国人の採用に至った際、まず検討するべきは当該外国人の業務内容、つまり実際に行ってもらう仕事の中身です。誤解される方も多いですが、単純労働は「技術・人文知識・国際業務ビザ」の対象外です。

技人国ビザは職種が限られる

  • 工場でのライン作業や飲食店での接客業務
  • 通訳・翻訳者や総合職、システムエンジニアとしての業務

現行の法律上、残念ながら前者のような、いわゆる単純労働に分類される業務は在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当しません。コンビニやチェーン店等で勤務している外国人は、留学ビザや配偶者ビザを所持し在籍しているケースが大多数です。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)は後者に代表されるような、ホワイトカラー・オフィスワークの職種に従事する外国人にのみ与えられるものであり、採用の段階でこの点を意識しなければなりません。

技人国以外の就労系ビザ

技人国ビザ以外に、就労が可能なビザとして「技能実習ビザ」や「特定技能ビザ」が挙げられますが、雇用にあたっては監理団体や送り出し機関の仲介、各種技能試験の受験が必要になります。

一部の大企業等を除いて、これらのビザは企業が単独で取得できるビザではありません。そのため、技人国ビザとは全く取り扱いが異なるものだとお考えください。なお、過去に技能実習生等を雇用した経験のある会社は、単独で特定技能ビザを取得できる可能性があります。

就労ビザ取得の条件

就労ビザの申請・取得にあたっては、当該外国人が従事する予定の業務で求められる技術や知識をある程度体得していることが大前提です。そして、その判断は下記の2点が指標になります。

  • 学歴の要件
  • 実務経験の要件

学歴要件と実務経験要件の両方を満たす必要はなく、どちらか一方のみを満たしていればよいとされます。そのため、多くの外国人は学歴要件のみをクリアした上で就労ビザ・技人国ビザの申請を行います。

学歴要件について

技人国ビザを希望する外国人は、大卒または大卒と同等以上の教育を受けていることが求められます。大学は日本国内だけでなく、海外の大学も含まれます。海外の大学を卒業していれば学歴要件は満たされるので、当該大学が発行する卒業証明書をもとに申請書類を組み立てていきます。

ただし、海外の大学といっても、国によっては変則的なカリキュラムが存在するので、当該国の大卒がそのまま日本の入国管理法上の大卒に該当するかは検討の余地があります。そこで、簡易的に見分ける方法として、学位(Degree)の有無が挙げられます。

教育課程を修了した学生に対して、大学が授与する称号のことを学位(Degree)といいます。

Bachelorの記載を確認

一般的に、大学を卒業した者には「学士」と呼ばれる学位が授与されます。学士は英語で「Bachelor」と表記されるので、まず採用担当者は、雇用を検討している外国人から卒業証明書のスキャンデータを送ってもらい、Bachelorと記載されているかどうかを確認します。

もちろん、修士(Master)や博士(Doctor/Ph.D.)の学位であっても就労ビザは申請できます。これは日本国内の大学を卒業している場合でも同じです。

専門学校卒業者の場合

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を希望する外国人が大学を卒業していなくても、過去に日本国内の専門学校を卒業し「専門士」または「高度専門士」の称号を付与されていれば、それをもって学歴要件を満たすとされ、申請が可能になります。

大学の専攻科目との関連性

前項の学歴要件を満たし、単に大学を卒業していれば誰でも就労ビザが与えられるわけではありません。従事する業務内容と関連する科目を専攻し卒業していることが求められます。なお、専攻科目と業務内容が一致している必要はありません。あくまでも関連さえしていれば十分許可は見込めます。

イメージとしては、仮に企業側が未経験者可としてシステムエンジニアを採用したとしても、その外国人が文学部などを卒業していれば、業務と専攻科目の関連性がないと判断され、技人国ビザの許可を得るのは難しくなるとお考えください。

専門学校卒業者が専門士または高度専門士の称号で申請に臨む場合、業務との関連性は大卒者よりも厳しく審査されます。

実務経験の要件について

雇用予定の外国人が学歴要件を満たしていないケースでは、実務経験に関する要件を満たすことで技術・人文知識・国際業務ビザの申請が可能になります。条件は「入社後の業務内容に関連する業務を10年間以上経験していること」が求められます。もちろん、経験している事実だけでなく、それを立証できる資料(勤務先発行の職歴証明書など)も審査上必要です。

ただし、いくら日本国内で従事する業務と関連していても、過去10年間の勤務歴が単純労働に該当すれば、技人国ビザは許可されません。審査では専門的な職歴を要求されるため、実務要件を満たしてビザを取得するのは学歴要件に比べハードルが高いとされています。

通訳・翻訳等の業務に従事する場合

通訳、翻訳、語学指導などの、いわゆる国際業務類型に該当する仕事を予定している外国人の場合は、上記の実務要件が3年間に短縮されます。詳細は事例紹介のページをご覧ください。

単純労働の線引き

冒頭で説明したとおり、外国人を雇用する際は学歴や実務経験のほか、日本で行う業務内容自体にも要件が課されています(単純労働の禁止)。つまり、技人国ビザの対象は「一定水準以上の能力が必要になる業務」と言い換えられますが、業務内容における一定水準のレベルは、そこまで高くありません。

社会通念に照らして単純労働に該当しない程度の、相応の知識やスキルを要する業務であれば、審査上特段の問題はありません。当該外国人でなければ遂行できない程度の業務(非代替性)までは求められません。

社員研修と単純労働

他方で、新入社員をチームへ迎えるにあたって、社員研修の一環として、およそ単純労働と位置づけられる業務に従事する機会も多くあります。そこで、この項では「採用時の研修」における単純労働の取り扱いについて解説していきます。

幹部候補として採用しますが、当面は現場研修(単純就労)を行う予定です

よくいただくご相談のひとつですが、現場での業務(単純労働)が研修の範囲内であれば、技人国ビザが交付される可能性は高いです。中枢を担う人材として採用したのち、実際の現場を把握するため、店舗等で一定期間の研修や単純就労を実施するケースが典型例です。

上記のような案件について、実務上は、在留期間中の就労活動を全体的に見て判断されるものと解されます。すなわち、社員研修(単純労働)が「全体の中の一部」であれば、それをもって不許可にすることはなく、原則は在留資格を付与する方向で審査が進められます。

あくまでも例外的な内容

採用時の研修とはいえ、単純就労を前提とした申請はあくまでも例外的な内容になります。現場研修等を含めたかたちで技人国ビザを取得するには、主に下記の事項を書面上で主張・立証する必要があります。

  • ホワイトカラーとして採用していること
  • 当該研修がこの先の業務において有用であること
  • 研修期間は入社当初の短期間で終了すること

なお、研修中の単純労働は必ず認められるものではありません。企業の規模や事業内容によっては、研修の必要性自体を疑問視されるケースもあります。

報酬・給与額について

外国人の雇用にあたっては、企業が支払う給与額も審査の対象です。実務上は、基準省令として公表されている「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」の規定をもとに審査が進められます。まず、ポイントとなる報酬の定義から解説します。

技人国ビザにおける報酬の定義

原則として、報酬は基本給賞与を指し、通勤手当や住宅手当、扶養手当は含まれません。

  • 報酬額 = 年間の基本給 + 賞与の総額
  • 月額報酬 = 報酬額 ÷ 12ヵ月

実際に支払った報酬額は、次回の在留期間更新許可申請(延長申請)で厳格に審査されるため、くれぐれも有利な申請を狙った報酬額の虚偽申告には注意してください。

日本人と同等額以上の報酬

外国人の報酬額は、同社で同じ業務に従事している日本人従業員の報酬額を下回ってはいけません。加えて、同業他社で勤務する日本人従業員の平均賃金より明らかに低額だとみなされる場合も、技人国ビザは許可されません。

安い労働力として外国人を雇用できますか?

外国人雇用において、外国人だから安い給料で済むといったことは、現行の法律上あり得ません。給与規定等、日本人を新たに雇用したときと同じ扱いだとお考えください。なお、地域の最低賃金や担当職種にも左右されますが、実務上は20万円前後の月額報酬がボーダーラインとされています。

ちなみに、大卒の外国人であれば日本人大卒者の給与額、専門職に従事する外国人であれば、その企業に在籍する日本人専門職の給与額を参考にして審査が実施されます。

就労ビザ申請の必要書類

在留資格「技術・人文知識・国際業務」における必要書類の組み合わせは、雇用元となる企業の規模等に応じて4つに分類されています。カテゴリー1は上場企業等、カテゴリー4は新設会社等が該当しますが、カテゴリー2と3に関しては「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を見て判断します。

給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

上記の赤枠箇所にある「給与所得の源泉徴収票合計表」内の「源泉徴収税額」の金額が1,000万円以上であれば「カテゴリー2」、1,000万円未満であれば「カテゴリー3」の扱いとなります。そのほか、雇用元の企業が在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている場合は「カテゴリー2」に該当します。

当記事では、ご依頼の多いカテゴリー2・カテゴリー3に該当する企業様を対象に必要書類を紹介します。

カテゴリー2の必要書類

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 申請人の証明写真(縦4cm×横3cm)
  • 返信用封筒
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し
  • 専門士・高度専門士であることを証明する文書(専門学校を卒業している者のみ)

カテゴリー2に該当する企業においては、原則これらの資料だけで申請は受理されます。

なお、弊所では、ご相談・ご依頼の内容に応じて、よりスムーズな審査及び追加資料提出通知による審査期間の遅滞を考慮し、カテゴリー3と同等の申請書類を準備するよう案内しています。

カテゴリー3の必要書類

A 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表写し
B 専門学校を卒業している者のみ

海外側で準備する書類 企業側で準備する書類 採用内定通知書
証明写真(4cm×3cm) 在留資格認定証明書交付申請書 労働条件通知書
卒業証明書(Graduation Cert.) 申請理由書 履歴書
Graduation Cert.の日本語訳文 履歴事項全部証明書 会社案内/各種パンフレット
職歴証明書 決算書/決算報告書 返信用封筒/レターパック
その他能力等を立証できる資料 法定調書合計表の写しA 各種補足説明書
パスポートの写し 雇用契約書 専門士等の称号証明書B

上記で紹介している資料は一例ですが、通常はこれらの中から書類間の整合性を考慮し、各企業にとって一番相応しい組み合わせを検討・選択していきます。なお、技人国ビザの申請には原則として面接がなく、提出した書類のみで審査が進んでいきます。

法的リスク

この章では、企業が違法に外国人を雇用した際の罰則について解説しています。

適切な在留資格を保有していない外国人を就労させたり、在留資格の範囲を超えた業務に従事させたりした場合は、不法就労助長罪が成立します(入管法第73条の2)。同条文には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と規定されています。

この法律で注意すべきは、企業側が不法就労であることを知らなかった場合でも処罰を免れることができない点です(知らなかったことについて過失のない場合を除きます)。しかるべき確認を怠ると、外国人本人だけでなく、企業側も罪に問われる可能性があります。

外国人の雇用にあたっては、上記のような刑事罰も規定されており、今後もますますコンプライアンスの強化が求められます。活動内容や各種要件を正確に把握し、リスクの排除に努めるべきです。

当事務所のサポート内容

最後に、弊所のサービス内容についてご説明します。

申請に必要な資料をすべてご案内

採用内定に至った経緯や貴社の業務内容及び企業情報、最新の許可データ等をもとにオーダーメイドで必要資料をご提案します。企業様側に行っていただくことは、下記の3点のみでかんたんに手続きができます。

  • 弊所作成のリストをもとに内定者・法務局・社内等で資料の準備
  • Webヒアリングシートの入力
  • 完成書類を管轄の出入国在留管理局へ提出

また私たちは来所不要で業務が完了する仕組みを整えておりますので、貴重な業務時間を割いて弊所まで足を運ぶ必要もございません。事務所の開設以来全国対応を実現させており、あらゆる地域の企業・団体様からご依頼をお受けしています。

受け取った書類の精査・チェック

当事務所が作成する書類以外にも、企業様側で準備された資料が審査ではポイントとなります。そのため、私たちは受け取った書類をそのままにせず、精査を通して個々の事例に即した確認作業を行います。

**の書類が**なので、事前に**の書類も追加で用意してください

企業様でも気付かないような箇所や、書類間で生じる小さな矛盾にも対応でき、入管局から追加資料提出通知を受ける頻度も激減します。

申請書類をすべて作成

申請に必要な書類をまとめて作成します。事務所内で完結するため、整合性のとれた高品質な書類が納品されます。なお、作成期間は執務状況にもよりますが約10日間をいただいております(準備いただいた資料に問題等なく、作成が可能となった日から10日間)。

申請理由書(別紙)

申請理由書(別紙)

補足説明書(各種)

補足説明書(各種)

その他書類(適宜)

その他書類(適宜)

私たちは基本的な申請書類に加えて、これら弊所独自の書式も豊富に取り揃えており、それぞれの企業様に適した資料を作成・添付いたします。追加費用は一切いただいておりません。

追加資料提出通知の対応

仮に追加資料の提出通知(資料提出通知書)を受け取った場合、速やかに担当者へご連絡ください。類似案件の所内調査ののち、私たちが追加書類一式の作成や審査官との交渉を行います。企業様側は書類を入管局へ郵送するだけで手続きが完了します。

追加オプションをご利用いただければ、提出を含めたすべての手続きを私たちが代行いたします。
資料提出通知書

資料提出通知書

追加の補足説明書

追加の補足説明書

追加の状況説明書

追加の状況説明書

追加書類の提出期限は、2週間程度の期間を設定されるケースが多く、迅速な対応が求められます。通知の内容によっては企業様への再度ヒアリングや、別途補足資料の準備をご案内しますのでご安心ください。

査証申請書(Application Form)の記入補助

弊所では、出入国在留管理局への申請のほか、海外現地の大使館・総領事館に対して提出する入国査証申請書(Application Form)の記入補助・アドバイスも行っています。本来は入社予定の外国人がご自身で記入する書類ですが、私たちはお相手がスムーズに入国できるよう、最後までサポートします。

アドバイスや相談に追加費用はかかりませんので、何回でも担当者へ連絡できます。
査証申請書の見本(1枚目)

査証申請書の見本・1枚目

査証申請書の見本(2枚目)

査証申請書の見本・2枚目

面接時のアドバイス

万が一の面接もご安心ください。出入国在留管理局から面接の連絡があったとご報告をいただければ、担当者より改めて企業様へ想定される質問事項や対応策をお伝えします。

不許可となってしまった場合は、全額ご返金または無料再申請でご対応いたします(一部例外あり)。

よくあるご質問

可能です。雇用契約以外にも委託契約、嘱託契約が該当します。なお、いずれにしても継続的な契約であることが審査上求められます。また、委託・嘱託契約は一般的な雇用契約に比べて活動の安定性が損なわれるため、許可率は低くなる傾向にあります。

原則、雇用元企業に在籍している方が書類提出者(法定代理人)となり、申請書類を持って、お近くの出入国在留管理局もしくは出張所へ出向き申請することになります。なお、追加オプションをご利用いただければ、私たちが申請手続きも代行いたします。

標準処理期間として1ヵ月から3ヵ月間と公表されています。なお、それよりも短い期間で結果を通知されるケースもあれば、3ヵ月を超えて審査が継続するケースもございます。

許可になると「在留資格認定証明書」が発行されます。その後、雇用元企業がその証明書を内定者のもとへ郵送し、当該外国人が同証明書を持って現地の日本大使館・領事館で入国査証の発給を受けます。査証発給の手続きが完了次第、当該外国人は日本への入国が可能になります。なお、許可後の手続きに関しては、個別にご案内資料を送付していますのでご安心ください。

在留資格認定証明書が発行されてから、3ヵ月以内に日本の空港で上陸審査を受ける必要があります。3ヵ月を経過してしまうと、原則再発行は認められず、再申請となりますのでご注意ください。もし、トラブルや不測の事態が発生した際は、弊所までご連絡ください。

参考法令・裁判例など

出入国管理及び難民認定法第22条の4・第70条1項4号・第73条,労働基準法第15条1項,労働基準法施行規則第5条,国家戦略特別区域法第16条の7,東京地裁平成26.5.30判決,平成20.7.17付法務省管在第3327号

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Yuji Komada
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